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「設計担当」と「建築士」の圧倒的な違い


◇家づくりは「信頼」が基本。誰を信頼する?

住宅の設計は、「建築士」に依頼していますか?
それともホームメーカーの「設計担当」ですか?


直接建築士に依頼されている方じゃない限り、その真偽は意外と知らないことが多いのです。そしてそれを、不安に思っている方もいるようです。

 

「建築士じゃないのに、間取りや家の構造のこと言ってわかるのかな?」

「設計担当や営業の方も建物の専門知識ってあるの?」

 

建て主の方はやっぱり安心して家づくりをお任せしたいわけですから、不安に思うことがあってもそれは決しておかしいことではありません。信頼をよせて任せられるのかどうか、それは最も重要なポイントです。

 

そもそも「建築担当」と「建築士」というものは根本的な違いがあります。例えば同じ知識量で、同じ経験値だったとしても、絶対に超えられない「壁」が両者の間には存在するのです。

 

今回は、建築士と設計担当の大きな違いについて解説します。

◆建築士とは?

建築士というものを簡単に説明すると「公に認められた建築物に関する専門家」ということ。

「建築基準法」から始まる法律を使いこなすことを国に認められた、建築知識のスペシャリストなのです。


建築士の試験に合格するためには、構造・法規・計画・施工・環境という5科目の専門知識を一度に試されます。その他の1つでも欠けていたら失格、また来年。国家資格の中で、毎年1科目ずつ合格するような「累積方式」をとらない、数少ない総合力資格です。


その後に図面の製作能力試験を行い、合格したわずか数%の人間が大臣より「建築士」の称号を受け取れます。
にわかに取れるような資格ではありません。それゆえ、根本的に建築物に関する知識量が途方もなくあるということになります。


ただしここで重要なのが、建築物そのものに関する知識はあっても、「間取りに関するテクニック」があるかどうかは別だということです。


以前投稿しましたが、建築士にも分野が分かれているため、得意不得意はあります。建物とひと口に言っても、住宅なのかビルなのか、木造なのか鉄骨造なのか、というように色々ありますよね。

【過去記事 依頼する建築士にも得意分野がある 参照】


端的に言うと、住宅の相談については「住宅を専門にしている建築士」が最も信頼の置ける人なのだと考えます。

 

分野に特化しているというのは、つまり奥の深いところまで知識はありますし、事例もたくさん知っていることになります。住宅は建て主さんの個性や色が出たり、年齢・家族層・生活環境も様々なので、特に経験を積んだ建築士は頼れる存在といえます。

 

しかし、建築士は個性が強い方も多々・・・合う合わないは少なからず存在します。施主ではなく建築士の色を出しすぎる方も中にはいますので、よく打合せを重ねてしっかりと要望を伝えるべきですね。

◆設計担当とは?

簡単に言うと「間取りのことをよく知っている一般人」です。
つまり、入社してから住宅に関するノウハウを学び始め、周りの人よりは知識と経験がある一般の方です。


間取りのテクニックは秀でている可能性はありますが、それでも公的に認められない人でしかないのです。建築物そのものを根本的に理解しているのではなく、「住宅」についての経験だけを積んできたのが設計担当なのです。

 

余計な部分は排除し、本当に必要な部分だけを実践的にしっている存在といえる部分もあります。つまり、裏を返せば建築士がわからない部分も知っている可能性があるということなのです。

 

間取りや設計に関すること以外に、住宅のお金のはなし、家づくりの現代の傾向やお客様から感じたこと・情報を持っていることもあります。家づくりは間取り設計が全てではありません。

 

営業の仕事も兼ねている人も多いですから、他社の設計した間取りについても詳しいかもしれませんね。設計の知識の保証はありませんが、信頼を得るためのノウハウは持っていると言えるでしょう。

◇その根本的な違いとは何なのか

建築士も設計担当も、どちらも信頼に足る存在になる可能性はあるということはわかりましたね。ですがこの両者の中で、どう転んでも並ぶことのできない、決定的な違いがあります。


それは「社会に対する責任」です。


国から認められている以上、国民のためにその知識を深め続けなければならないと定められていて、何かあったときに、責任を取らなければいけないのが「建築士」。最悪、逃げても許されるのが「設計担当」です。

 

建築士の資格を取るに当って、「建築士倫理」というものを熟知しなければいけません。これは建築士法という法律によって定められているものです。

 

(建築士法 第二条の二)

建築士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、建築物の質の向上に寄与するように、公正かつ誠実にその業務を行わなければいけない。

 

この事実だけは、絶対に外れることは無いのです。知識や経験・技術の前に、責任は必ずついて来なければいけないのです。そういう意味では、やはり建築士を頼りにしたいところですね。

 

 

◇重要なのは信頼し、対話すること

 

では結局のところ、建築士じゃない設計担当が考えた間取りでOK出しちゃっていいの?という不安がよぎった方もいるのではないでしょうか。

 

それは大丈夫です。

設計図が完成してから施工に至るまでのプロセスには、たくさんの計算や審査があります。なので「絶対にあり得ない間取り」や「おかしな構造のもの」は、そもそも建てられないようになっています。そこは安心してください。

 

家づくりで、本当にポイントとなる肝は、「総合的な事情を加味して設計されているか」ということ。土地・地盤、近隣事情、地方の特性、建て主の情報も全部含めて色々です。当然、法律も。

 

それを理解してさえいれば、建築士だろうと設計担当だろうと、良い設計は作成できます。逆によく練られたプランを提案しているようでも、テンプレート通りの設計図である可能性もあります。

 

まずは、何より信頼関係が必要です。そして、その相手はしっかりと責任を持って設計をしてくれているのか。

 

自分の担当者が建築士であるか否かは気になる部分かと思いますが、なによりそこが重要な部分だということになります。しっかりと対話をし、相手を理解することが必要ということなのです。