圧迫感との上手な付き合い方


◆圧迫感についての相談

玄関を入って正面に壁があると圧迫感が出てしまうでしょうか?

 

リビングの広さが○帖だと、吹き抜けにした方が圧迫感が出ないでしょうか?

 

こんな質問を頂きます。

 

これは、誰もが広々とした空間を望むからこそ出てくる不安だと思います。

 

しかし、この類の相談は、親身になりきれない部分があります。

 

今回は、その理由も含め、この「圧迫感」との付き合い方についてお話します。

 

◆圧迫感とは?

まず「圧迫感」とは、どういうものを言うのでしょうか。

 

辞書によると、

 

圧迫感…強く押さえつけられている感覚。息苦しい感じ。または、大きく迫っていて威圧されている感じ

 

とあります。

 

これを家で感じる「圧迫感」に当てはめてみると、

 

圧迫感…その場所が狭いと感じること。居心地が悪い感じ

 

といったところでしょうか。

 

「圧迫感」の意味をみてみると、感覚や感じると言う言葉が使われていることに気づくかと思います。

 

つまり、これは気持ちの問題ということになります。

 

感じ方や気持ちというのは、人それぞれというのはお分かりですよね。

 

では、この気持ちというものはどのように形成されていくのでしょうか。

 

それは、「育ってきた環境」と「今までの経験」から形成されます。

 

要するに「先入観」によって感じ方は変わってくるということです。

 

◆先入観から来る圧迫感

人それぞれにある「先入観」によって感じる「圧迫感」。

 

これは実際にどういうものなのか例を挙げて説明しましょう。

 

では、ひとつ質問をします。

 

「トイレは普通どれくらいの広さですか?」

 

どのくらいのサイズのトイレを頭に思い浮かべましたか?

 

この「普通」というのも感覚の一つであり、正解は無いものなのですが、この「普通」という感覚こそが先入観によって出来上がっているものなのです。

 

1帖なのか、2帖なのか、なかなか○帖というのは難しい話ですが…

 

例えば、1帖のトイレが普通と思っている人からすると、0.5帖のトイレでは圧迫感を感じ、2帖のトイレでは広々と感じます。

 

もちろん、1帖のトイレに入っても普通と感じるだけで、圧迫感や広々さは感じません。

 

しかし、2帖のトイレが普通と思っている人にとっては、1帖のトイレであっても圧迫感を感じてしまうのです。

 

他にも、お友達の家へ遊びに行き、扉の前で「ここがリビングだよ。」と言われたとしましょう。

 

頭の中には、自分が知っているリビング、つまり今住んでいるリビングを想像するでしょう。

 

それと比べて狭ければ、圧迫感を感じてしまうのです。

 

これは、その人独自の経験からくるものであり、人それぞれであることは明白です。

 

このように、人間は知らず知らずのうちに「リビングはこれくらいの大きさ」だとか、「キッチンの幅はこれくらいの広さ」だという認識が出来上がっており、それ以下のものには圧迫感を感じてしまうのです。

 

しかし、家を建てる際は家族だったり、夫婦だったり、誰かと建てることがほとんどですよね。

 

1人だけで家を計画するわけでは無いので、それぞれの感覚を擦り合わせる必要があるのか…と、果てしないことのように感じます。

 

しかし、そんな必要はないのです。

 

どういうことかって?次の段落でお話しましょう。

 

◆感覚に惑わされないで

人それぞれ感じ方が違うため、家族みんなが圧迫感を感じないようにする必要があるのか…と思った方いませんか?

 

そんなことをしていたら、どんどん家が大きくなり、金額が上がっていってしまいますね。

 

たしかに、圧迫感を感じる家にしたくないという気持ちはわかります。

 

しかし、人間にはすごいことに「適応能力」というものがあるのです。

 

最初は不便に感じたことも、時間が経つにつれて、その環境に慣れていくことができます。

 

所詮「圧迫感」というのは、感覚に過ぎません。感情のひとつなのです。

 

つまり、初めは多少の圧迫感を感じていたとしても、それなりに慣れていくことができるのです。

 

それよりも大事なことは「実際に必要な広さ」、つまり「実用性」です。

 

「圧迫感」を感じたとしても、使い勝手の良いものであれば「慣れ」として気にならなくなっていくものです。

 

逆に、使い勝手の悪いものは、どうしてもずっと気になってしまうものなのです。

 

例えば、玄関に設置するシューズボックスを例に挙げて考えてみましょう。

 

玄関に天井までの高さのシューズボックスは圧迫感を感じるため、腰高のものを採用しました。

 

確かに、一理あります。腰高のシューズボックスは圧迫感を感じず、広々と感じられるかも知れません。

 

しかし、天井の高さのシューズボックスに比べると収納力は落ちるため、靴が全て収まりきらないという問題が出てきてしまいます。

 

時間と共に圧迫感には慣れていきますが、「収納が足りない」ことに慣れることはなく不満だけが残っていくことになってしまうのです。

 

つまり、感情に流されることなく、本質をしっかりと見つめ、収納にしても部屋にしても、自分たちに必要なサイズを見極める必要があるのです。

 

家づくりにおいて、もちろん見た目や感覚も大切な要素のひとつです。

 

しかし、囚われすぎてしまっては使い勝手が悪い家となってしまいますので、ぜひとも注意して計画していただきたいと思います。

 

ご参考になれば幸いです。