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「その柱はなくせません」はウソ!?安くて広い空間!木材の「規格」を理解しよう!


◆広い空間は簡単に作れるが・・・

間取り図を検討する中で、柱がジャマだとか、壁がジャマというような場面は出てきます。そして、それをなくすように設計担当にお願いしてみたとき、こんなことを言われると思います。

 

「構造的になくすことはできません」

 

これを建築の専門家に言われてしまうと、もう何も言えなくなってしまいますよね。だって、構造のことはわからないのですから。

 

ですがこれ、じつは大きなウソです。

 

正確に言うとウソではないのですが、ウソなんです。なんじゃそりゃ?と思いますよね。

 

そんなことで今回は、経済的な建物を作ろうとしたときに、知っておいてほしい「構造」の話を少ししておきたいと思います。

 

ちなみにこの中でいう「経済的」というのは、単純に「安い」ということではなく、「コスパが良い」という意味だと思ってください。

 

 

◆木造には「経済的」は大きさがある

例えば、リビングなどの広い空間を作ろうとしたときに、その大きさの限界ってどのくらいだと思いますか?

 

実はその答えは、【無限】です。

 

もちろん正確には無限ではありませんが、現実的に「住宅規模の大きさ」で考えたときに、どこまでも柱のない空間を作ることは、技術的に可能です。

 

だって、木材でダメなら鉄骨でつくればよいわけですし、それがだめなら鉄筋コンクリートで作れば良いわけですし、その他にも「プレストレスコンクリート構造」「鉄骨鉄筋コンクリート構造」「シェル構造」など、大空間を作るための構造というものは世の中にはたくさん存在しています。

 

東京ドームには柱がないですよね?そうやって作れば、150mくらいの無柱空間なんていうのは、現実の話なのです。ただ、それだとコスパが良くありませんよね。単純にむちゃくちゃ高くなってしまいます。一般市民が買えるような金額にはなりえません。。

 

ではその「広い空間を作る」という言葉の前に、「現実的に」とか「経済的に」という言葉を付けるとどうなるのでしょうか。そうなると答えは明白です。

 

【3640mm×3640mm】

 

これが経済的な大きさということになります。

 

 

◆木材には「規格」があるから安くなる

なぜこの大きさになるのかというと、それは「木材の規格」に答えがあります。

 

そもそも10mもの長さの木材を切り出したとして、それを製材するのにも運搬するのにもかなりの大きなコストがかかります。そして何とか運び込めたとして、そんな長さの木材を大工さんが扱うのも大変ですよね。何よりむちゃくちゃ重たいわけですし。

 

そういう意味で手ごろな大きさが扱いやすく、そして最もニーズが多い寸法として決めている規格。それが「12尺」であり、「3640mm」という寸法ということなのです。

 

ニーズが多いからこそ、その長さの木材をを大量に製材することができ、大量にストックしても売ることができる。結果として「安価」で手に入れることができる規格ということです。

 

日本では「尺貫法」という、昔ながらの長さを表す単位があります。

 

1820mmというのが「1間(イッケン)」であり、6尺のことです。この数字が建築業界の基本となる数字なのです。

 

木材もそうですが、板材も外壁材も屋根材も内装材も、様々な建築材料がこの「尺貫法」に基づいて製材されているため、これを基準に計画するのが検討しやすく、造りやすいということになるのです。

 

そして3640mmというのはその倍、2間であり12尺のこと。だからなじみやすい規格だということになります。基本的には、これが住宅の階高さを決めていたり、柱と柱の間の「梁」の長さを決める根拠となるわけです。

 

これ以上になると「特注品」になることが多く、この寸法以下で納めることが「経済的」な住宅を作るためのコツといえるのです。おそらくほとんどの住宅の柱間の寸法は3640mm以下になっているはずです。

 

「うちは10mくらいあるよ?」なんていう人もいるかもしれませんが、きっとそれは長方形の部屋で言う「長い辺の寸法」ですよね。「短い辺の寸法」はきっと3640mmになっているか、リビングのどこかに柱が立っているのだと思います。

 

短い辺の長さが3640mmになっていれば、梁はそこに何本でも架けられます。幅が3640mmの長方形であれば、何100mだろうと伸ばしていくことは可能だということです。

 

 

◆もちろん、大きくできないわけではない

とはいえ、これ以上の長さになると、木造では無理ということではありません。もっと大きな断面の木材にすれば可能ですし、様々な金物を使用して補強することも可能です。そのような事例はたくさんあります。

 

ただ、一気に高価になる。ただそれだけです。

 

これらを踏まえて考えると、「全く同じものはない」といわれる住宅ですが、使われている多くの建材はほとんどが同じ規格の中で組み立てられていることがわかります。そもそも「量産する」ことを前提として、規格が決められているわけですから。

 

これを知っておけば、設計担当に「それは無理です」と無慈悲に言われて、悲しい思いをしなくて済みます。余計なやり取りなく、もう少しスムーズに進めていけることでしょう。

 

もちろん大きい空間を作ることは技術的には可能ですが、それをやるための「経済的覚悟」があるのであれば、どんどん提案してみてください、という話です。

 

ただ、その時には住宅メーカーよりも、設計事務所に依頼することをお勧めいたします。住宅メーカーはあくまで「量産型」の商売です。もともと大空間をつくるという売り出し方をしているメーカーがあれば別ですが、そうだなければ経験が少ない可能性が高いです。

 

設計するには、必ず得手不得手があるからです。自分だけの住宅、自分だけの空間を作り出したいといいうk十であれば、規格品から作られるものではなく「自由な発想」からアイデアを積み上げる必要があります。

 

そうなると、量産型のハウスメーカーよりも、経験豊富な建築士に依頼する方が面白いものができる可能性が高いということになりますので。

 

ご参考になれば幸いです。